環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の正式表明に対する談話
連合北海道事務局長 出村 良平
安倍首相は15日夕刻、すべての関税がゼロとした場合でも日本経済全体にプラス効果があるとした政府の統一試算を示し、TPP交渉参加を正式に発表した。国民的な論議も十分に保障しない、交渉参加ありきの合意なき拙速な判断は到底認められるものではない。
これまで連合北海道は、TPP交渉参加について、関税撤廃を原則とする市場アクセスの他、医療制度、食の安全基準、金融・保険、労働市場、政府調達など21分野にも及び、経済や産業、地域など国民生活や社会のあり方と深く関わっていることを指摘し、国民に対する情報開示と丁寧な説明、広範な論議を行うよう主張してきた。
特に北海道は、農林水産業をはじめ第一次産業が基幹であり、食品加工や流通・サービスなどの関連産業を含め、地場産業の衰退や雇用の喪失など道内経済や地域の疲弊が懸念されることから、オール北海道で慎重な対応を政府に求めてきた。3月11日には、TPP交渉参加反対緊急道民集会実行委員会の構成団体として、緊急全道集会を開催してきた。
TPP交渉参加の表明は、こうした懸念の解消や求めに応じないばかりか、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、参加交渉に反対する」などとした6項目順守の自民党選挙公約とも齟齬をきたす。与党内においても、自民党所属議員が半数以上も「TPP参加の即時撤回を求める会」に加わるなど賛否は二分しており、各自治体の慎重判断を求める政府要請や各地域での市民や各種業界による反対集会の開催など、国民的コンセンサスを得られているとは言い難い。
こうした地方の特性や産業構造の違いなどを考慮せず、地域やそこに住む生活者の視点を欠いた一律的な政府の判断は、厳しく批判されなければならない。
連合北海道は、今後も政府に対してTPPに関する情報開示や将来の展望に向けた説明を求め、国民各層から意見を聴取して参加交渉に反映させるなど、国民の利益を最大限追求する観点で、交渉参加からの撤退を含め外圧に屈しない毅然とした対応を強く要請する。
同時に、TPP交渉参加によって打撃が懸念される農林水産業を守るためのあらゆる施策を講じるとともに、医療・保険、食料の安全保障、中核的労働基準など安心社会の基盤となる重要事項について重点的に対策を行うよう求めていかなければならない。
北海道にとって、TPP問題は死活問題である。連合北海道は、地域社会・経済・産業、労働者・市民の雇用や暮らしを守るため、引き続き、TPPに関する国民が納得できる詳細な情報や丁寧な説明を求め、農林水産業関係者をはじめ全ての関係団体・組織が一丸のもとオール北海道で国民・道民の合意なき対応に対しては厳しく対峙していく。
以 上
2013年3月15日 | カテゴリー:談話