トップページ → 新着記事一覧

安倍首相の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加表明に対する事務局長談話

連合北海道事務局長 出村 良平

安倍首相は、米国時間22日の日米首脳会談において、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に関わり、「全ての関税撤廃をあらかじめ約束することは求められない」などとする内容の共同声明を発表し、「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」として、TPP参加交渉を表明する意向を示した。
しかし、共同声明では、「TPPは全ての物品を交渉の対象とする」ことが明記されており、「日米協議では自動車や保険に関する懸案事項などで作業が残されている」とし、米国が求めている規制緩和についても協議することが盛り込まれている。これまで米国は、自動車や保険の他、牛肉の分野でも譲歩を求めており、既にBSEに関して日本政府は、米国などの外国産牛肉に対して「20ヶ月以下から30ヶ月以下」に月例条件を引き上げる緩和を行うなど、TPPに関して多くの懸念が払拭されたわけではない。

連合北海道は、TPP交渉参加について、国論は二分し賛否の根拠が明らかではないことから、国民に対する情報開示や説明、国民的論議を十分確保するとともに、拙速な判断を行わないよう発信してきた。また、北海道をはじめ、経済団体や消費者団体などが参加するTPP問題連絡会議等の加盟団体として、地域に暮らす生産者・労働者・生活者の視点から国民・道民合意のないTPP交渉参加については認められるものではないとの考え方を示し、国に対する要請にも加わった。自らもTPP問題については今後の日本を左右するとして、産業・経済、金融、医療、食料の安全など国民生活への影響について、賛否両論の観点で学習を深めてきたところである。
安倍首相のTPP交渉参加の表明は、こうした求めに応ぜず、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、参加交渉に反対する」などとした6項目順守の選挙公約とも齟齬をきたすなど、TPP交渉参加に前のめりの拙速な判断との批判は免れない。

農林水産省の試算では、関税が撤廃された場合、日本の農産物の生産額は3兆4千億円減少するとしている。特に北海道においては、農業をはじめとする第一次産業が基幹であり、農業生産額、食品加工や流通・サービスなど関連産業を含め、2兆1千億円もの損失が生じるとの試算(道農政部)もあり、「聖域なき関税撤廃」が前提でないとしても道内経済や道民に与える影響が懸念される。
また、交渉分野は物品の市場アクセスにとどまらず、輸入食品の安全基準や政府調達、知的財産の保護、投資ルール、労働など21品目にも及び、国民には依然として不透明である。政府は、農林水産省、経済産業省、内閣府とそれぞれに異なる試算を示しているが、メリット・デメリットを明らかにした統一した試算や資料を国民に提示し、合理的な理由を挙げて説明するとともに、国民的な論議を促し、合意を図るべきである。

TPP交渉参加の表明にともない、国民的な合意に基づく判断でなければ認められない。連合北海道は、あくまでも国民生活の安定を前提として、今後の国の方向性や将来展望を明確にするとともに、懸念される課題の対策を早急に構築することを強く求めていく。

以 上


トップページ → 新着記事一覧